AIで契約書作成!リーガルチェックも時短する方法

契約書作成に何日もかかっていませんか?法務担当者や弁護士との調整で、ビジネスのスピードが落ちてしまう。そんな悩みを抱えている方は多いはずです。

実は、AIを使えば契約書のドラフト作成時間を大幅に短縮でき、法務部門や専門家の確認時間も効率化できるんです。ただし、AIはあくまで「叩き台」を作るツール。最終的な法的判断は必ず専門家が行う必要があります。

今回は、AIを活用した契約書作成の実践法と、絶対に守るべき注意点をお伝えします。

なぜ今、AI契約書作成が注目されるのか?

従来の契約書作成の課題

時間がかかりすぎる問題

  • ゼロからの契約書作成:1-2週間
  • 過去事例の検索・参照:半日-1日
  • 複数の専門家との調整:数日-1週間
  • 修正・校正の繰り返し:数日

人的リソースの制約

  • 法務担当者の不足
  • 外部弁護士への依頼コスト
  • 専門知識を持つ人材の確保困難

AIが解決できること

  • ドラフト作成時間を90%短縮(2週間→数時間)
  • 標準的な条文の自動生成
  • 過去契約との整合性チェック
  • リスク条項の洗い出し

ただし、これらはすべて「叩き台作成」の段階。最終的な法的責任は人間が負います。

⚠️ 絶対に知っておくべき注意点

AIでできること・できないこと

✅ AIができること(叩き台レベル)

  • 一般的な契約書の雛形生成
  • 標準的な条文の提案
  • 基本的な法的リスクの指摘
  • 契約書の構成・体裁の整備

❌ AIができないこと

  • 法的責任を伴う最終判断
  • 複雑な法的解釈
  • 個別事情を考慮した条項調整
  • 法改正への完全対応

必ず守るべき原則

  1. AIの成果物は「参考資料」として扱う
  2. 最終確認は必ず専門家(弁護士・法務担当者)が行う
  3. 重要な契約ほど慎重にチェックする
  4. AIに法的判断を委ねない

AIで契約書作成!5つのステップ

ステップ1:契約の基本情報を整理

まず、どんな契約を作りたいかを明確にします。

整理すべき項目

  • 契約の種類(業務委託・売買・賃貸借など)
  • 契約当事者の情報
  • 契約期間
  • 報酬・対価
  • 主な業務内容・商品内容
  • 特別な条件や要望

情報整理シート例

【契約種類】:業務委託契約
【委託者】:株式会社○○(東京都渋谷区)
【受託者】:△△合同会社(大阪府大阪市)
【業務内容】:Webサイト制作
【報酬】:50万円(税別)
【期間】:2024年4月1日〜6月30日
【特記事項】:著作権は委託者に帰属、月1回の進捗報告必須

ステップ2:AIでドラフト生成

整理した情報をもとに、AIに契約書のドラフトを作成してもらいます。

基本的なプロンプト例

あなたは法務に詳しいアシスタントです。以下の情報をもとに、
業務委託契約書のドラフトを作成してください。

【重要】
・これはドラフト作成のサポートであり、法的責任は負いません
・最終的な確認は専門家が行うことを前提としています
・一般的な条項を参考に、基本的な構成で作成してください

【契約情報】
・契約種類:業務委託契約(Webサイト制作)
・委託者:株式会社ABC(東京都渋谷区○○1-1-1)
・受託者:デザイン工房XYZ(個人事業主、東京都新宿区××2-2-2)
・報酬:総額50万円(税別)
・期間:2024年4月1日〜2024年6月30日
・納品物:コーポレートサイト(20ページ程度)

【特別条件】
・著作権は委託者に帰属
・月1回の進捗報告
・3回までの修正対応込み

【求める内容】
・一般的な業務委託契約の条項構成
・上記条件を反映した条文
・リスク回避のための基本的な条項
・契約書として最低限必要な項目

※法的な最終判断は専門家が行うため、標準的な内容で構いません

ステップ3:条項別の詳細確認

生成されたドラフトを条項ごとにチェックし、必要に応じて修正を依頼します。

チェックポイント別プロンプト

1. 報酬・支払い条件の確認

作成された契約書の報酬・支払い関連条項について、
以下の点を考慮して見直してください:

・支払いタイミング(前払い・後払い・分割)
・支払い方法(銀行振込など)
・振込手数料の負担
・支払い遅延時の対応
・追加作業が発生した場合の扱い

一般的なWeb制作業務委託での標準的な条項を参考に、
バランスの取れた内容を提案してください。

2. 責任・リスク分散の確認

契約書の責任・リスクに関する条項を見直してください:

・委託者の責任範囲
・受託者の責任範囲  
・免責事項
・損害賠償の制限
・不可抗力の扱い
・機密保持

双方にとって公平で、一般的なリスク分散ができている条項か確認し、
必要に応じて修正案を提示してください。

ステップ4:業界特有の条項追加

業種や契約内容に応じて、特別な条項が必要か確認します。

業界別の特別条項例

IT・Web業界

Web制作・IT業務委託で特に重要な条項を確認してください:

・著作権・知的財産権の取り扱い
・納品物の検収基準
・技術的な不具合への対応
・開発環境・使用ツールの指定
・セキュリティ要件
・個人情報の取り扱い

これらの項目で標準的な条文を追加・修正してください。

マーケティング・広告業界

マーケティング業務委託で考慮すべき条項:

・成果指標・KPIの設定
・広告費等の実費精算
・競合他社との契約制限
・PR・宣伝での実績使用許可
・SNSアカウント管理権限
・炎上・風評被害時の対応

これらを考慮した条項の追加をお願いします。

ステップ5:最終チェック用資料作成

専門家による最終チェック用に、確認ポイントをまとめます。

専門家向けチェックシート作成

作成した契約書について、法務担当者・弁護士向けの
チェックポイント一覧を作成してください。

【特に確認が必要な項目】
・法的リスクが高いと思われる条項
・業界慣行と異なる可能性がある条項  
・当事者間での調整が必要な条項
・法改正で影響を受ける可能性がある条項

各項目について、なぜ確認が必要かの理由も記載してください。

契約書種類別テンプレート

業務委託契約

基本構成

以下の構成で業務委託契約書のドラフトを作成してください:

1. 契約の目的・業務内容
2. 契約期間
3. 報酬・支払い条件
4. 業務の進め方・報告方法
5. 成果物の納品・検収
6. 知的財産権の取り扱い
7. 機密保持
8. 責任・免責事項
9. 契約の変更・解除
10. その他(管轄裁判所など)

各条項で一般的に使われる文言を参考に、
バランスの取れた内容で作成してください。

売買契約

重要ポイント

商品売買契約のドラフト作成をお願いします:

【重点項目】
・商品の仕様・品質基準
・代金・支払い条件
・納期・納品場所
・検査・受け入れ基準
・瑕疵担保責任
・所有権移転時期
・危険負担

BtoB取引での標準的な内容を参考に、
売主・買主双方のリスクバランスを考慮してください。

秘密保持契約(NDA)

シンプル版

秘密保持契約書のドラフトを作成してください:

【基本項目】
・秘密情報の定義
・秘密保持義務の内容
・秘密情報の使用制限
・秘密情報の返却・廃棄
・契約期間・有効期限
・損害賠償
・管轄・準拠法

双方向の秘密保持で、一般的なビジネス用途を想定した
標準的な内容でお願いします。

AIツール別活用法

ChatGPT

得意分野

  • 一般的な契約書の雛形作成
  • 条文の平易な説明
  • 契約書の構成整理

活用例

ChatGPTで契約書ドラフトを作成する場合:

1. まず契約の概要を説明
2. 「法的責任は負わない」ことを明記
3. 標準的な条項での作成を依頼
4. 専門家チェック前提であることを確認

これらを必ずプロンプトに含めてください。

Claude

得意分野

  • 長文の契約書全体の作成
  • 複雑な条件の整理
  • 条項間の整合性チェック

Gemini

得意分野

  • 最新の法改正情報の参照
  • 類似契約事例の検索
  • 業界標準との比較

専門家との効果的な連携方法

1. 事前準備を徹底する

AIドラフト提出時に含めるもの

  • 契約の背景・目的
  • 特別な要望や懸念点
  • AIでの作成過程・プロンプト
  • 自分なりの疑問点

2. チェックポイントを明確化

法務担当者への依頼例:

「AIで業務委託契約のドラフトを作成しました。
以下の点について特にご確認をお願いします:

【特に重要な確認事項】
・報酬支払い条件の妥当性
・著作権条項の実効性
・責任制限条項の法的有効性
・当社の標準契約との整合性

【質問事項】
・○○の条項は法的に問題ないでしょうか
・△△のリスクをより軽減する条項はありますか

お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願いします。」

3. 段階的な確認プロセス

  1. 第1段階:AIドラフトの基本チェック
  2. 第2段階:法務担当者による内容確認
  3. 第3段階:相手方との調整
  4. 第4段階:最終的な弁護士チェック(重要契約の場合)

よくある失敗とその対策

失敗例1:AIの出力をそのまま使用

リスク

  • 法的に無効な条項の含有
  • 相手方に一方的に不利な内容
  • 業界慣行に反する条項

対策

  • 必ず専門家のチェックを経る
  • 相手方の立場も考慮する
  • 業界団体の標準契約と比較

失敗例2:情報不足でのドラフト作成

問題

  • 重要な条件の漏れ
  • 曖昧な表現での条項作成
  • リスクの見落とし

対策

  • 契約前の要件整理を徹底
  • 不明点は事前に関係者と確認
  • 段階的な詳細化を行う

失敗例3:AIへの過度な依存

危険性

  • 法的判断をAIに委ねる
  • 契約書の重要性の軽視
  • 専門家確認の省略

対策

  • AIは「効率化ツール」として位置づけ
  • 最終責任は必ず人間が負う
  • 重要度に応じた確認プロセスを設定

実践課題とスキルアップ

初級課題:簡単な契約から始める

練習用契約例

  • 単発の業務委託(1回限りの作業)
  • 短期間の賃貸借契約
  • シンプルな売買契約
練習用プロンプト例:

「簡単な業務委託契約の練習として、
以下の条件でドラフトを作成してください:

・作業内容:会社パンフレットのデザイン
・期間:1ヶ月
・報酬:10万円
・その他:標準的な条項のみ

法的確認は別途行うため、一般的な構成での作成をお願いします。」

中級課題:継続的な契約関係

  • 長期の業務委託
  • 代理店契約
  • ライセンス契約

上級課題:複雑な商取引

  • 共同開発契約
  • M&A関連契約
  • 国際取引契約

コスト削減効果の測定

削減時間の計算

従来の方法

  • 契約書作成:40時間
  • 法務確認:16時間
  • 修正対応:24時間
  • 合計:80時間

AI活用後

  • AIドラフト作成:4時間
  • 法務確認:8時間(効率化)
  • 修正対応:12時間(回数減少)
  • 合計:24時間

削減効果:70%の時間短縮

ROI計算例

【コスト削減計算】
・時給5,000円の法務担当者の場合
・従来:80時間 × 5,000円 = 40万円
・AI活用:24時間 × 5,000円 = 12万円
・削減額:28万円/件

月10件の契約があれば、年間336万円の削減効果

まとめ:AIは強力なアシスタント、判断は人間が

AIを活用した契約書作成は、業務効率化の強力な手段です。しかし、絶対に忘れてはいけないのは、AIは「叩き台」を作るツールであり、法的な最終判断は必ず専門家が行うということです。

正しく活用すれば、契約書作成の時間を大幅に短縮し、法務部門の負担を軽減できます。一方で、過度に依存したり、専門家の確認を怠ったりすると、重大なリスクを招く恐れもあります。

AIの力を借りながら、人間の専門的判断と組み合わせることで、効率的で安全な契約業務を実現しましょう。


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